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『キャンディ・キャンディ』 少女漫画としての
 水木杏子原作、いがらしゆみこ画 1975年 講談社

「少女漫画としての最高の読み物」は何かと誰かに聞かれたら、
私はまっさきにこの『キャンディ・キャンディ』をお勧めするだろう。

原作者がいて、しっかりとしたストーリーをたて、
魅力あるキャラクターを描く作画者のいる本作は、
キャンディの明るく機転の利く性格と、逆境にもポジティブシンキングで
くじけない所が最大の魅力なのだと思う。
キャンディの明るい部分、その裏の悲しさを押し殺して
どこか無理している性格は、この年になって再読して、
更に気付かされた。なんと健気。
誰からも愛されるキャンディのキャンディたる所以は、ただ能天気に明るい、
という単純明快な性格ではなくここにあるのではないだろうか。
そして誰からも愛されるキャンディはまた、皆を愛しているのだ。

キャンディの初恋は夭折したアンソニーだった。
いつもキャンディを気遣い優しく包んでくれるアンソニーは死んでしまった。
そのアンソニーと対極にあるかのようなテリィとキャンディは後に恋に落ちる。
キザで奔放、不良のレッテルをはられた貴族の子息という、まわりの評価を
キャンディは真に受けず、彼女の価値観でテリィの本質を見抜くのだ。
キザな不良という仮面を被った(被らざるをえない生い立ちがあった)
テリィの心は次第にキャンディの前で溶けてゆき、
またキャンディの生い立ちを知ることにより「能天気な金持ちのお嬢さん」と
誤解していたことに気付く。きっと二人は似ている。
アンソニーはキャンディを微笑んで見守るだけだったが、
(心配してぶつシーンはあったが)テリィもキャンディも、
どんどんと互いの内面に入っていく。嫌といっても、容赦なく。
それはお互いがお互い、今までに居なかった存在だ。
惹かれ合うのは必然だろう。
そして、この二人の会話の掛け合いの絶妙なこと。
とてもセンスが良く、テンポも良い。会話のみを文字で追いかけると、
赤毛のアンのような少女文学かと錯覚させる位、上品で面白い。


イラスト集より
テリィはキャンディを助け、また、夢に向かうために学園を去った。
キャンディもまた、自分の夢とはなにかを考え、看護婦を目指す。
夢に壮大な動機付けなど必要はない。
ただ、それに向かってひたすらに努力すること。情熱を持ち続けること。
友情や愛情にも理由なんていらない。
ただ、そうしてあげたい、幸せな顔がみたい、
それだけで勝手に体が動き、言葉となる。
そんな簡単な事を普段忘れている自分にも気付かされた。
こんないい子ちゃん的な感想を、恥ずかしげもなく書けるのも、
本書の魅力だろう。

もし、夢や希望や友情や愛や、そんな基本的なわかりやすい感情を
認識したくなったときがあったら、ちょっと振り返って考えたくなったら
お勧めしたくなる本であることは確かだ。
(しかし、絶版なので手に入りにくいことが難点)

やっと手に入れた宝物のイラスト集

蔵書リスト

『トーマの心臓』 萩尾望都 1974年 小学館
『フランス窓便り』 田渕由美子 1976年 集英社
『空の色ににている』 内田善美 1981年 集英社
『いちご物語』 大島弓子 1975年 朝日ソノラマ
『キャンディ・キャンディ』 水木杏子原作、いがらしゆみこ画 1975年 講談社
『エマ』(現代) 森薫 2002年 エンターブレイン

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